コラム

今月のコラム

2018年11月号

歯科医院経営を考える(494)
~キャッシュレス社会~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 最近はキャッシュレス社会と言われるが、日本は最も遅れた国だと言われており、キャッシュレス比率は20%、つまり現金決済が80%だという。銀行の店舗数やATMの設置台数も多く、現金が簡単に手に入ることや、治安も高く安心して現金を持ち歩くことができる等もその原因とされている。最近は毎月の職員への給与は、銀行振り込みをされている医院がほとんだと思う。だがその振込手数料がバカにならない。先日も取引銀行のATMからある会社に8000円を振り込むのに324円(約4%)の振込料を徴収されたが、これでは銀行も衰退せざるを得ないのではないか。韓国がキャッシュレス比率が89.1%、中国が60%、アメリカが45%、インドが40%だと言われており、日本が最も遅れていると言われている。ただ日本のATMは世界最高の品質で、投入された紙幣の皺を伸ばして整えることから、新しい通帳を取り出して必要な印刷をして預金者に戻すという作業をやってのけるロボット並みの性能で、1台が一千万以上もすると言われている。そうした費用が使用料に加算されて振込料が高くなっているというのである。現状では日常的にも現金を持ち歩くし、ご霊前や結婚お祝い等はそれぞれの決められた封筒に現金を入れて出すのが習慣になっている。ちなみに新札(1万円)の発行が日本で一番多いのが京都だそうだ。その理由は踊りや謡い、書道等の師匠に支払う際には新札できちんと番号も揃えて支払う風習があるからだという。現金の需要はこうした習慣や儀礼が背景にあるということであるから簡単にはなくならないだろう。ただ筆者の場合は、よく出かけるので近鉄系の「KIPS」カードを使っているが、これが便利で近鉄であろうとJRであろうと電車、バス全て乗り物はこのカード1枚で済むのである。しかもこのカードを落として慌てたこともあったが、すぐ会社に連絡すると即座にカード番号の無効を設定してくれて助かったことがある。そういう点でも実に便利である。政府は2025年までにキャッシュレス比率を40%に引き上げる目標を掲げている。このままでは経済的な問題としてインバウンド(訪日観光客)への対応が問題になっている。現金でしか買えないというのでは商機を失う。また現金貯蔵や運搬費用の巨額化である。現金貯蔵や輸送費用関連費用が年間1兆円とも言われているから今後もキャッシュレス社会はどんどん進むのでははないか。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2018年11月号より転載〕