コラム

今月のコラム

2018年 9月号

歯科医院経営を考える(492)
~地方に医療法人の設立を~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 大阪で小学校のPTA役員をしている知り合いが嘆いているのは、近くにタワーマンションができたら転入してくる生徒が激増して校庭に仮校舎を建てないと収容ができないというのである。近くにユニバーサルシティがあり、そこで働く人が急に多く入居してきたという。東京都は2019年より不動産会社が老朽マンションを買い取れば別の場所に建設するマンション容積率をも上乗せできる制度を創設するというが、こうしたタワーマンションの増設には学校や診療所等の公的施設の増設や消防設備も視野に入れているのか?と気になる。東京中央区では2007年から2016年の10年間に35,000人、港区で39,900人の人口増加となっている。多くはこうしたタワーマンションの増設の影響が大きい。都心部への人口の集中現象と一方地方では高齢化とともに人口減少が激しい状況になっている。こうした都市構造の変化と地方の高齢化、人口減少傾向がいろいろな問題を我が国に提起してきている。先日日本歯科医療管理学会が新潟市の日本歯科大学で開催されたが、島根県歯科医師会医療管理部の先生によって「2030年歯科診療所ゼロ時代の到来か?」と題して発表され、「高齢化によりリタイアする歯科医師が増えていき、かつ新たな歯科医師の参入がなかった場合、現在該当する無歯科医師地区に加え、2030年には一次医療(住宅も含む)を担う歯科医療機関が存在しなくなる自治体が出てくる可能性がある」としている。財政状況悪化とともに身動きが取れない状況に陥っている自治体も出てきており、ましてや個人の範囲の限界を超えている。こうした状況を救う手立てとして、医療法人を活用することが出来ないかと思う。個人の先生が中心になり法人化し、できれば最低でも歯科医師3人程度の法人化が望ましい。そのためにはある程度の規模にしなければならないが、介護施設も併設し、小型のバスを巡回させて患者を集めるとともに、訪問診療も手掛けることができれば可能ではないか。地方自治体とも話し合い必要があるが、町おこしの一環として「道の駅」等の人を集める仕掛けと共に働く場を作り、幼稚園、学校等の施設を集約できれば夢ではないのではないかと思う。人材の確保が難しいが、空き家を社宅にして家賃無料とし、将来は医科の診療所も併設できれば最高の立地となると思うが・・・。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2018年 9月号より転載〕