コラム

今月のコラム

2018年 2月号

歯科医院経営を考える(485)
~新専門医認定制度~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 新年早々から私事で恐縮だが、風邪をこじらせて肺炎にかかり、近くの内科のT先生に連日点滴を打ってもらう羽目になった。気管支が弱いという点は承知していたがまさか肺炎になるとは考えもしなかった。連日診療を受けて知ったのはT先生の徹底した患者中心の診療姿勢と意外に低い保険点数である。日曜日でも筆者1人のために医院を開けて点滴を打ってくれたことに頭が下がった。しかも意外な低い点数に驚いた。レントゲン写真を撮って210点、点滴89点、投薬167点、再診料125点、合計591点である。献身的な先生と充実した保健医療体制には、ただただ感謝するのみである。ところで今年の4月から専門医の認定制度が変わるという。現在医師は医療法において診療科目として標示しうる科目のうち自主的に選んでそれを掲げることが許されている。これに対して昭和32年に麻酔学会が麻酔指導医制度を定めて以後、次々と各学会認定の専門医が登録され、日本専門医制評価・認定機構に加盟する83学会がそれぞれ専門医を認定していた。しかしそれぞれの学会によって認定基準がバラバラで統一性がないということで、昨年新制度のもとで日本専門医機構が引き継ぎ、新専門医制度がスタートした。この制度により新卒医師は初期臨床研修(2年間)終了後に、19の基本診療領域(内科、外科、小児科、産婦人科、精神科等)のいずれかの専門医資格の取得が求められる。その後さらに専門性の高いサブスペシャルティ領域(消化器、循環器、呼吸器、血液、内分泌代謝など)の専門医を目指すという方向の二段構えの専門医制度である。なお新制度では家庭医という位置づけで「総合診療専門医」が新設された。昨年11月に2018年度の専門研修の一次募集が締め切られたが、内科と外科の専門医になるためには僻地勤務が義務付けられたために、それを嫌った医学生達の内科、外科離れが加速する一方、過剰気味となっている眼科志望者が二割以上も増えたと言われている。研修を受ける医師からすればいろんな症例の研修が受けられる大都市に集中するのは当然ではないか。特に新規の外科医の希望者が少なかった群馬県、山梨県、高知県では希望者がたった1人だったと言われている。これでは地域医療の崩壊は免れない。何よりも幾多の症例を経験している先生だからこそ安心して受診できる患者の立場にもっと配慮した専門医制度であってほしいと思う。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2018年 2月号より転載〕