コラム

今月のコラム

2020年03月号

歯科医院経営を考える(510)
~ベンゾジアゼビン系の睡眠薬~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 厚労省が発表した18年度の医療費は42兆6000億円だったと公表している。日本の医療制度は国民皆保険制度がいきわたり、世界的に見ても最高の保険制度だと思う。かかった医療費の1~3割負担で、ほとんどと言っていい治療で受信でき、しかも高額療養費制度によって、最低の負担で受診できる等というのは世界的に見ても、これほど整備された制度はないと思う。(例:年間所得600万円の人が、治療を受けて3割の自己負担額で100万円の治療費を支払った人でも、87,430円の自己負担で済む)ただ問題は医療費の膨張が進み、国民1人当りの医療費が337,000円となっている。14年度が314,000円だったから、4年間で23,000円増えたことになる。最近はこの制度のゆがみが生じてきているといわれている。2月15日発行の週刊東洋経済は「信じてはいけない、クスリ・医療」という特集を組んでいるが、その中に「高齢者への安易な処方で認知症患者が数十万人」という記事を掲載している。よく高齢者の人が夜眠れないので、医者にかかり睡眠薬をもらっているという話はよく聞くが、睡眠薬・抗不安薬でベンゾ・ジアゼビン(BZ)系の睡眠薬は記憶力や判断力が奪われ認知機能の低下を招く副作用や、急に元気がなくなり寝たきりになるとか、急に怒り出して暴言や暴力を繰り返すといった症状があるという。海外では危険性が指摘されたが、日本では漫然と処方が続けられているというから驚きだ。BZ系の薬剤は1960年代に安全な薬剤として、全世界に普及したといわれているが、その後82年にはカナダで、アメリカでも90年代に指摘され注意を促しているという。日本では05年に日本老年医学会から「特に慎重な投与を要する薬物リスト」で警告し、15年には長時間効果が持続する種類のBZ系薬剤の使用について「使用すべきではない」と警告しているという。ところがBZ系薬剤の使用はほとんど減っていないという。同紙の調査によって「社会医療診療行為別調査」で「睡眠鎮静剤・抗不安剤」の1か月間の薬剤料の推移を、75歳以上に限って集計してみたら、03年は1か月間で約16億円、10年後の13年には25億円を突破し、18年は約19億円だったという。ただしこの間の薬価改定で3割前後引き下げられているというから、使用量はあまり変っていないことになると警告している。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2020年03月号より転載〕