2019年12月号
歯科医院経営を考える(507)
~日本国の行く末~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
日本は現在小選挙区制をとっており、1選挙区からは1人の議員が選出されることになっている。この制度は1996年の衆議院選挙から導入された。1地域から1人を選ぶわけだが、平均すると人口約30万人から1人の議員が選出されることになる。これはこれで議員の顔が良く見えるし身近に感じることができるという点ではよい制度だと思うが、立候補する人間からすれば選挙人の顔がよく見える反面、どうしても日常的な問題に関心が行きやすい。ついつい私情に走る場合も出てくるのではないか。私情に囚われて贈り物をするという場面も多くなり、週刊誌に記事ネタを提供するという事態になり、就任間もない大臣が辞任するという事態を招いている。議員は広いビジョンで外交を語り、我が国の金融問題、防衛問題、経済問題といった広い、大きい問題に関心を持ち、日本国を常に頭に置いて考えるという発想が少なくなってくるのではないか。我々の住んでいる地域にどれだけ利益をもたらしてくれているかが大きな関心事になり、そちらに目が向いて視野が狭くなってしまったのではないかと危惧せざるを得ない。そうかと言って地元のことに目が向かなくなるのも困るが・・・。そういう意味で。一つの県から複数の候補者が立候補して争う中選挙区制度を考え直してもよいのではないかと思う。それともう一つ内閣府の存在である。何よりも大きいのは、省の人事権を持っていた事務次官から人事権を取り上げ内閣府が握り事務次官以下の人事権を握ったことである。それによって国会答弁で問題になった役人の「忖度」が問題になった。大臣の立場、発言を忖度した役人の発言が多くなったことである。かつての誇り高い日本の役人は政治家の言いなりにはならず、凛とした役人としての誇りが感じられたものだが、最近の役人は一回り小さくなったように感じるのはどうしてだろうか。政治家の考え、行動も以前に比べて一回り小さくなったことと、役人の誇りが消えて政治家の顔色を伺い従順になってしまったことが、日本という国を矮小化してしまっていると思う。今後の日本国の行く末に不安を感じざるを得ない。
(つづく)
〔タマヰニュース2019年12月号より転載〕