コラム

今月のコラム

2019年11月号

歯科医院経営を考える(506)
~臓器移植~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 先日、63歳の知人が自分の息子から腎臓を一つもらって移植手術を受けて元気になり仕事に復帰した。日本での臓器移植は1997年10月に臓器移植に関する法律が施行され、本人の脳死判定に伴い、書面により臓器を提供する意思と家族の承諾を前提に、死後の臓器移植及び角膜の提供が認められるようになった。以後日本では毎年移植手術が実施されているが、今年9月末現在で14,048件の移植希望登録数となっている。実際の臓器移植数は100件足らずで、数年の待機が必要とされている。ところでドナーの登録という制度がない中国では電話で問い合わせて数日待てば移植手術が受けられるという。1992年に李洪志によって法輪功という中国伝統の仏教と道教の教えを取り入れて体系化した気功法が爆発的に広がったが、政府批判をしたことから、当時7,000万人とも1億人ともいわれた信者が片端から逮捕され収容所に隔離されたと言われている。さらに中国政府はチベットの仏教徒やウイグル地区のイスラム教徒を弾圧し、多くの信者を拘束し収容したが、こうした施設から脱走し、そこから逃げ出してタイやベトナムに亡命した人の証言や、2006年に中国で臓器移植をしていた医者の妻だった人がアメリカに亡命して告発したことから明らかになり、国際NPO法人の調べでは6万件から10万件の移植が行われているという事実が明らかになっている。それも臓器の提供者は収容所に隔離されている受刑者や裁判で死刑が確定した罪人だというのである。宗教の信者は親戚に類が及ばないために姓名を名乗らないから番号で呼ばれているというが、こうした人間の臓器を取り出して移植しているというのである。収容所に入れられると、定期的に身体検査を受けさせられ、血液、腎臓、肝臓、心臓等の検査を強制的に受けさせられるという。恐ろしいことに病院には火葬場さえ持っているというから常軌を逸している。2016年6月13日には米下院議会で、2019年6月17日イギリス民衆法廷(エリザベス女王から権威を授与された法律家による裁判)で中国の臓器移植について弾劾裁判が実施され、中国に対して非人道的な行為として非難している。これに対して日本のマスコミが口をつぐって何も報道しないというのはどうしてなのか。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2019年11月号より転載〕