コラム

今月のコラム

2019年10月号

歯科医院経営を考える(505)
~生活整備の基盤は国で~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 台風15号は千葉県を中心に神奈川県海沿、伊豆半島に大きな風水害をもたらし、9月14日時点で電力の復旧が2週間かかるという。たまたま台風15号が関東を通過している時に東京に出張していて翌日は環状線JR渋谷駅のホームで2時間半も立ち往生させられたが、未だに被害の実態が把握できていないという。伊豆半島や新島では家屋が壊滅状況だという報道もある。今回の台風は瞬間風速57.5mと風による被害が大きかった。大きな鉄塔が倒れたり、電柱が倒れる等の生活の基盤である電気や水道等の被害が大きいのも大きな特徴だ。それもまだ実際の災害の実態調査が進んでいない。いずれにしてもここ1~2年を見ても地球温暖化の影響からか自然災害が大きくなってきているように思う。国連の気候変動に関する会議がまとめた報告書によれば、温暖化ガスの排出規制が進まないと今世紀末までに海面が最大1メートルを超えると予測したと日経が報じている。昨年の7月には広島、岡山を中心に集中豪雨によって死者237人、行方不明8人、全壊6,767戸、半壊11,243戸が出ている。9月には台風21号が大阪北部を直撃して死者8名、重傷者4名、家屋の全壊1軒、一部破壊2,820軒という被害を、今年の8月には梅雨前線に伴う大雨で佐賀県武雄市を中心に広範囲の水害をもたらし、死者4人、全壊7軒、半壊1軒、床上浸水1,773軒が出ている。こうした自然災害の頻度と規模の大きさから考えても根本的な治水や災害対策の根本的な見直しが不可欠ではないか。例えば東電の送電設備への投資額は1991年で9,000億円から2018年は3,000億円に縮小していることが指摘されている。鉄塔の設計基準は10分間の平均秒速が40mに耐える設計になっているそうだが、君津市ではそれが12.8m、千葉県中央区でも31.9mしかなかったという。ちなみに沖縄での設計基準はそれが60mになっているそうだ。東電は福島の原子力発電で大きな負担を強いられているが、私企業としての限界にきているのではないか。電力のような基本的なエネルギー政策は全国の電力会社を一本にするとか、国が担うべきではないか。国や自治体は何もかも民営化の方向に舵を切っているが、電力や水道などは本来国や地方自治体が責任をもって維持するべきだと思う。地方自治体は予算が限られており資金不足なら国が積極的に乗り出すべきだ。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2019年10月号より転載〕