コラム

今月のコラム

2019年09月号

歯科医院経営を考える(504)
~貧困率15.6%を直視すべき~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 昨年東京都中央区泰明小学校が自校の標準服に、海外高級ブランドのアルマーニがデザインした学生服に切り替えると発表して話題になったことがある。東京都内でもこの学区の平均世帯年収は972万円とされ、日本で一番の土地高公示価格地域でもある。住宅が極端に少ない地域だから学校選択制(特認校制度:中央区在住であれば学区外からも通学できる制度)を採用しているという事情もあるのだろう。ただこうした一方で、全国に広がっている一食100円~200円程度で子供に提供する子供食堂が16年には319か所だったものが、18年3月時点では2,300か所に激増している実態がある。最近は貧困の家庭の子供ばかりではないようだが、知り合いが経営している食堂でも、一般客向けに食堂を経営しており、客の有志の人から少額の寄付を募り、食券を発行して貧困家庭の子供の配っている店もある。過去日本は「総中流社会」と言われたことがある。ところが現在(2016年現在)の日本の貧困率は15.6%(年間の等価可処分所得の中央値の半分以下の所得-2016年は122万円-の人の場合)で、先進国ではアメリカ(20.0%)についで2番目に高い比率である。訪問する歯科医院では一人で子供を育てながらパートとして短時間勤務しているスタッフを時々見かけるが、理由はどうあれ、こうした家族を救済できる仕組みが不可欠ではないか?現在子供7人に1人は貧困家庭の子供だという。国は2020年4月から幼児教育・保育の無償化を、3歳から5歳は世帯所得に関係なく認可保育所や認定こども園、幼稚園費用の無償化を実現するとしているが、それよりももっと根本的な貧困対策が不可欠である。戦後日本は朝鮮戦争等特需で経済が急成長をし、以後高度成長期を迎えたが、1997年になると、今まで高度成長していた日本経済がおかしくなり、以後15年近くに渡り長期経済が停滞した。そうした環境下で労働者派遣法が出来、派遣社員を採用することによって企業は人件費負担を低く抑えることが可能になった。逆に派遣社員の年間給与額は減少して最近の資料でみれば年間300万円以下の労働者が7割に達している。そこに海外からの安い賃金労働者の受け入れを始めたわけだから給与ベースが下落し、さらに貧困化が進む可能性があるのではないか。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2019年09月号より転載〕