2018年12月号
歯科医院経営を考える(496)
~若い労働力を活かす~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
昨年11月に友人の経営する会社のベトナム工場創立15周年記念式典に参加する機会があり久しぶりの海外旅行であった。その会社は油圧ポンプの技術が優れており世界のトップシェア70%という技術の優れた会社である。最初は中国に設立する目的で何度も足を運んだそうだが、最終的には中止を決断してベトナムにしたそうである。中止の決断をした理由は、近くの戦争資料館のような所に、かつて日本軍が中国兵や市民を暴行、強姦、虐殺したという写真や絵が掲示されており、こうした雰囲気ではまずいなあと思ったという。しかし今思うに中国に進出しなくてよかったと心からそう思うと吐露していた。それに比べてベトナムは9,700万人の人口で平均年齢が28歳と若く、日本人にはなじみやすい民族だという。社員2,000人を束ねている社長は日本に留学していた40歳台の女性で、日本からの出向は1人しかいないと言う。技術を学ばせるだけでなく、毎年50人程の従業員を日本に派遣して、製品に対する考え、思いを伝えているという。今は相談役になっている彼が工場内に入っていくと全員が一斉に立ち上がり挨拶するという情景を見ていると40年ほど前の日本の朝礼風景を思い出す。記念式典では若い社員が舞台に出て歌や踊りでにぎやかに会場を盛り上げていてベトナムの熱気を感じる一時だった。もう一つ見学した会社は、日本人の女性が経営する会社で日本から出される着物を縫製している会社であった。しかもすべて手で縫っているのである。若い女の子70名ほどが見事に針を操って綺麗に縫い上げているのを見て驚嘆した。特に高額の着物の縫製の受注をしているそうだが、徹底して針使いを教え込み、全てが手仕事だという。どちらの会社も社員への技術教育だけでなく、どのような思想、考えで製品が作り出されているか、製品に対する創業者の思いを学ばせている点にある。縫製工場でも何人か社員を日本に派遣して礼儀作法を学ばせているという。国は出入国管理法の改正をし、外国人労働者の受け入れを拡大する決定をしたが、日本語や、基本的な技術をしっかり教育することと、給与等の待遇面をしっかり守る体制が不可欠ではないか。
(つづく)
〔タマヰニュース2019年01月号より転載〕