2020年08月号
歯科医院経営を考える(514)
~地域別診療報酬制度の問題~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
一時収まったかに見えた新型コロナウイルスだが、ここにきて新規感染者の数が増えだした。7月16日午後8時現在で1日に601人増えて、23,144人となった。感染者数が増えているのは、検査件数が増えているからだという指摘もあるが、換言すれば潜在している感染者数が増えているということであり、最初から検査数を増やして陽性の患者を隔離するという方法を採用すべきであったということになる。隔離する病床に限界があるという事情もあり、行政の側もそのような決断をくだしたのであろう。現在のように人が国内外を通じて行き来している状況では、ある国が人の往来を止めたところで、結局はある程度の感染者数の増加は止めようがない。大企業を中心に自宅待機、テレワークの比率を高め、出社比率を下げている会社も出てきている。ただこうした状況が大きく人の行動を変えるという事実に注目しておく必要がある。また海外に進出していた大企業は、米中問題もあり、生産拠点を中国から一部国内に戻す、ないしは他の国に移す等の対策を打ち出している会社も出てきている。一方歯科医院への影響では患者の足が止まって収入が3、4割ほど低下した。自費の患者の予約キャンセルは少なかったが、保険の患者ではキャンセルが増え、予約が減少したという医院が多い。ただ一つ気になる動きが出てきている。神奈川県保険医協会が「地域医療の破綻を招かないよう、診療報酬の変動補正単価支払いを強く求める」との声明を出し、診療所ごとの加算制度を提案していることである。新型コロナウイルスによって各医療機関が疲弊する中、地域の医療関係団体から「地域の影響に応じて単価を替えて欲しい」という声が上がり始めたという。これまで「地域別診療報酬」の導入に対して医療現場からの拒否の声が多かったが、都道府県別に報酬単価を替える「地域別診療報酬」の現実味が出てきていると雑誌「選択」は報じている。地域単位で報酬単価を上げ下げできることで、医療財政を均衡させようという財務省の構想が出てきたもので、これに対する日本医師会、歯科医師会を筆頭として断固反対の声が根強かった。しかし反対の急先鋒だった保険医協会がこうした要望書を出してきたことで、全国一律の診療報酬制度の壁が崩れる可能性が出てきたということに注目すべきだ。
(つづく)
〔タマヰニュース2020年08月号より転載〕