コラム

今月のコラム

2021年01月号

歯科医院経営を考える(519)
~コロナによる医療崩壊~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
 昨年は年初から流行り始めた新型コロナウイルスの感染が一向に収まる気配を見せなかったが、今年はどうなるか気がかりだ。日本国内では12月16日時点で、感染者総数187,640人(日経発表)で、死者の累計も2,731人となっている。ただ感染が拡大しているだけではない。最近の傾向として、コロナから回復後にいろいろな後遺症に悩む患者が増えているという問題がある。国立国際医療研究センターにコロナで入院した63人の患者を対象に後遺症について調査したところ、発症から60日の時点で19%の12人が嗅覚障害、11人(18%)が呼吸苦、10人(16%)が倦怠感、3人(5%)が味覚障害を訴えたという。さらに14人(22%)では脱毛が確認されたという。またフランスのパリ大学の発表では、100日以上入院し、回復した患者120人を対象にアンケート調査をしたところ、入院後4か月の時点で55%が倦怠感、42%が呼吸困難、34%が記憶喪失、31%が睡眠障害を訴えていたという。今専門家が注目しているのは自己免疫反応だという。自己免疫反応とは、体内に侵入した病原体を攻撃するために活性化した免疫反応が、誤って宿主を攻撃してしまうということで、時には病気を引き起こす。神経難病のギラン・バレー症候群がその典型だと言われており、女優の大原麗子がこの病気で死亡したのが記憶に新しい。また注目されるのは、心臓障害への懸念である。アメリカのオハイオ大学の医師が医師会雑誌に発表して注目されているのは、コロナに感染した運動競技選手26人の心臓を調べ、うち4人が心筋炎だったと報告しているという。心筋炎はウイルス感染による心筋症障害以外に、感染に伴う免疫異常が関与すると言われ、不整脈による突然死以外に長期的に心不全等の合併症を引き起こすという。また心筋炎に関する研究で注目すべきは、対象者の多くが新型コロナ感染そのものでは無症状、あるいは軽症だということである。つまり軽症や無症状の感染であっても安心できないことを意味している。コロナワクチンの開発も目途がついたようだが、今後ワクチン接種に伴う問題は免疫異常だろう。これは避けて通れない問題ではあるが、海外での医学研究所の結果は、コロナ感染は免疫異常による長期的な合併症を生じやすいことを示している。また日本は病床1床当たりの看護師数は0.6人に対して、アメリカは2.84人、イギリスは3.09人で5分の1程度しかいない。しかも看護師の離職率が10.7%もあるということは看護師の負担が大きすぎるということを裏付けている。医療崩壊が起こらないことを祈るばかりである。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2021年 1月号より転載〕