コラム

今月のコラム

2021年 6月号

歯科医院経営を考える(524)
~公的機関の果たすべき役割とは~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 5月16日付日経新聞は、現在の新型コロナ感染者数は、東京が15万2,239人、大阪は9万4,775人と報じている。ところが前日からの増加数では、東京が542人に対して大阪は620人となっており、人口比では東京が、大阪の約1.5倍だから人口比から計算した大阪の感染者増加数がきわめて大きいと分かる。こうして発表されている感染者数だけではわからないが、実はその裏にコロナのPCRの検査数がかくれている。新型コロナの影響でオリンピックの延期が決定されるまでの期間、日本では新型コロナの感染の有無を調べるPCR検査の拡大に対して慎重論が主流となり、諸外国に比べて極端に少なかった。その後の検査数でも、例えば4月2日(金)のPCR検査数が東京で7,934件に対して大阪は11,358件で東京に比べて極端に多い。一方東京ではオリンピック開催を控えてPCR検査数を意識的に減らしている可能性がある。一方コロナによる死者数では5月16日の東京が1,951人、大阪が1,958人と大阪の方が多い。しかも97.7%が60歳以上の高齢者だという特徴がある。患者の急増を前に大阪の吉村知事は自衛隊や近隣の府県に対し応援の要請をしている。そもそも大阪府は病床数や医師や看護婦を含む病院の公務職員を減らし続けてきた。2007年に在籍していた8,785人の病院職員を、2019年には4,360人と半減(▲50.4%)させている。同時に府下の衛生部門の職員を、上記の年間に12,232人から9,278人へと▲24.1%減らしてきている。こうした政策の付けが回ってきているということだ。また大阪府は総病床数を、2007年の110,840床から2018年の106,920床へと3,920床減らしてきている。こうした医療分野の施設、人員を、効率の名のもとに徹底して減らしてきた付けが出てきているのだと思う。行政として本来守るべき府民の命を、効率を理由にして軽視してきた結果がこのような状況を招いている。大阪に限らず国も小さい政府を謳い、国鉄の民営化によって、北海道や四国ではどれだけ交通の利便性が損なわれたか。国営の鉄道で地方の人にも最低の利便性を確保するという基本理念や政策を忘れているのではないか。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2021年 6月号より転載〕