コラム

今月のコラム

2022年01月号

歯科医院経営を考える(531)
~新札発行の目的は?~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 2019年4月9日、麻生太郎財務大臣が2024年度に千円、五千円、1万円の3種のお札が新デザインに切り替わると発表した。新1万円札には今NHKで放映している大河ドラマの主人公渋沢栄一が登場するという。ただ新しいお札に切り替わるだけなら何も問題はないのだが・・・。現在世界各国の中で日本ほど現金重視の国はないと言われており、2020年12月末時点での「タンス預金」の額は、約101兆円にもなると言われている。マスコミを賑わせた日大前理事長の1億8千万円脱税事件も全て現金のやり取りだったことが明らかになっている。東北地方の大震災では、誰かが持っていた大きな金庫が流れ着いて大騒ぎになったが、世界では脱現金化(キャッシュレス化)が進み、デジタル通貨が非常な勢いで普及しつつある。日本のキャッシュレス決済比率は2019年時点で26.8%だと言われているが、韓国では96.4%、中国が65.8%、イギリスが68.6%である。現在日本は世界的にもまれにみる現金大国である。日本ぐらい現金崇拝の国はないと言われるが、慶弔時には今でも現金を使うし、習い事のお礼には新しいお札が礼儀となっている。つまり日本の場合は単なる決済手段としてのお金ではなく、お金というものに対する考え方が人間関係や生活習慣と一体になっているからである。ただ近い将来マイナンバーと銀行口座やカルテが結び付けられると現金以外はすべてが丸裸となる。マイナンバーとなってもタンス現金だけは不明のままとなるが。そこで新札切り替えを実施し、旧札を無効とすれば、全ての資産が明らかとなる。思い起こせば昭和20年(1945年)8月に太平洋戦争も終わり、9月にはGHQの管理下に入り、翌年昭和21年2月に預金封鎖が行われた。戦後国の巨額の負債を賄うための資金調達の目的で預金封鎖を行い、同時に新しい新札に切り替え、旧札を無効にした。これによって強制的に個人の預金や現金が把握され、10万円を超える預金に財産税が課税された。この財産税は金額が大きい程高率となり、1500万円を超える預金には90%という途方もない税率であったという。戦後GHQの指導下にあって貧富の差を無くすという方針に基づくものであったと言われてるが、2024年にどのような政策が打ち出されるか?

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2022年01月号より転載〕