2021年12月号
歯科医院経営を考える(530)
~歯科医院経営の多様化~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
ビジネス誌のプレジデントが「歯と眼の大問題」という表現を掲げて特集を組んでいる。「歯科医に対する不満の調査」では、「不満」があると答えた人が全体の60.7%もいると書いている。不満があると回答した人のうち多かったのは「治療の質」(54.5%)、「待ち時間が長い」(26.1%)、「予約の取りずらさ」(25.9%)、「態度が悪い」(20.8%)だという。ただ「治療の質」と回答した人のうち54.9%は「歯科医に対する満足度」において「治療の質」と回答しており、半分以上は満足しているということである。特に「予約の取りずらさ」や「待ち時間の長さ」に不満を挙げている人の中で、「治療の質」に満足している人が60.1%もいることであり、治療に満足している患者ほど予約のとりずらさや待ち時間の長さに不満を持っているということだろう。診療内容に満足している患者の場合、待ち時間や予約の取りずらさに少々不満があっても来院してくれるから問題はないが、それでも何回かの通院の中で1回くらいは早く診る機会を設ける等の配慮が必要ではないか。また同誌は自由診療についても取り上げているが、その中に自由診療が愛される4つの理由として、①歯科医のやる気が違う、②だらだら通わず一気に治療、③節税効果、④治療の自由度が高い、を挙げている。節税効果は所得の高い人ほど節税効果も大きくなるから、高所得者にとっては自費診療を選択し易くなる。自由診療を中心に診療している歯科医院も、最近はその経営形態は大きく変わってきているように思う。都心部で経営者等の高所得者を対象に診療する歯科医院や、自費診療を行うだけでなく、郊外に別荘地を確保し、周囲にバラを植え、テニスコートやコンサートの会場を作り、宴会や音楽会を楽しむというような趣味や生き方のグループを形成している医院もあり自費診療中心の歯科医院も多様化してきていると思う。多くの歯科医院を見ていると、市街地と住宅地では医院と患者との関係が少し違うように思う。市街地はいろいろな患者が来院するが、「立地条件の良さ」が来院の動機となっている患者が多い。また院長の治療技術に魅かれて来院する患者もいる。技術ではなく、院長やスタッフとの人間的魅力に魅かれて来院する患者もいるが、上記のようなある種のクラブ的発想集団を形成しているものもある。患者の来院動機が多彩になってきているように思う。
(つづく)
〔タマヰニュース2021年12月号より転載〕