コラム

今月のコラム

2022年02月号

歯科医院経営を考える(532)
~STEM教育の重視を~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 月刊経済誌「ダイヤモンド」の1月15日号は「ニッポン沈没」という衝撃的なタイトルを付けている。国際経営開発研究所が発表している「世界競争力ランキング」では、1989年にはダントツの1位だった日本が、32年後の21年版では、31位まで落ちている。2019年時点における日本の1人当り国内総生産性(GDP)は4万690ドルで、トップのアメリカが6万5000ドルだから、アメリカの62%程度しか稼いでいないことになる。1995年代以降日本は急激に輸出競争力が減速したことが生産性鈍化の原因である。1989年日本は輸出競争力が強く、東芝、日立、ナショナル、シャープ等の家電製品や日産、トヨタ、マツダ等々の自動車等の日本のメーカーが世界的に知名度を高め、家電製品、自動車を中心に輸出を伸ばしていった。筆者が住む奈良県にはシャープの工場が多くあり、今でも一部稼働しているが、台湾の鴻海精密工業に買収され、その報道がなされたときは衝撃的な事件だった。1995年代以降日本の輸出競争力が劇的に低下したことが、生産性鈍化の原因だとされているが、その主な原因はパソコンの普及に伴う世界的なビジネスのIT化である。80年代日本の半導体産業は絶頂期を迎え、DRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)分野での世界シェアーは80%に達したと言われていた。ところがその後パソコンの急激な普及に直面して、ほどほどの品質で安価なDRAMを多量に生産する必要が迫られる事態になったが、高品質のDRAMにこだわり続けたために、ほぼすべてのシェアーを韓国や台湾の企業に奪われることになった。コロナワクチン接種の電子証明の導入も他の先進国から大きく後れを取っている。DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは進化したデジタル技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものに変革することと言われるが、残念ながら日本はデジタル後進国だ。最近はアメリカを中心にインドやフランスが大きくITサービスを拡大してきているが、国家戦略としてSTEM(科学、技術、工学、数学)の教育を重視し、子供へのIT教育を強化することが喫緊の課題だと思う。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2022年02月号より転載〕